わが青春思い出の記 忘れ得ぬ人

10年をひと昔というならば、これから書く「わが青春思い出の記」はそれからさらに前の話である。
ひと口で言うと、人を愛するということは幸せである。とは言っても、人生には個々人によっていろいろとあるから、恋をすることが幸か不幸かは一概に言うことはできない。しかし、実際に恋をしている者にとって、人を愛し、恋をすると言うことは人生最大の幸せであると思う。自分は恋をした。そして人生で最高の幸福の頂点に立っていた。寝ても覚めても、洋子のことを忘れることができなかったし、自分の独身主義は、洋子との再会によって完全に消滅していたからだ。
 しかし、この結末がこうなろうとは、神ならぬ身にしても、あまりにも予測できないことであった。